JNS

日本ナノメディシン交流協会事務局464-8603 愛知県名古屋市千種区不老町
名古屋大学未来社会創造機構モビリティ領域
工学部6号館309号室内

設立趣旨

19世紀末から20世紀初頭は、1897年のトムソンによる電子の発見、1905年のアインシュタインによる特殊相対性理論の発表、1924年のボルンによる量子力学の発表とまさに近代科学のビッグバーンとも言える時代であった。1950年前後に至り、これらの基礎科学の大きな発明発見が円熟しまさに開花するがごとく、1947年ブラッテンとバーデイーンによるトランジスタ作用の発見、タウンズ、シャウロウによるレーザーの発明など、応用科学の大発見と発明が相次ぎ、超高密度集積回路への発展があり、それに付随してナノテクノロジーの概念が生まれた。このナノテクノロジーの概念はフラーレンやカーボンナノチューブの発見を契機として、ボトムアップのナノテクノロジーの概念へと発展した。
ナノテクノロジーの出現は、生命科学を基盤とする従来の医学や医療に大きな変化をもたらしつつある。蛍光プローブを利用した一分子操作や分子イメージング、量子ドットやベシクルやクラスターを利用した、ドラッグデリバリー、基板表面のナノ加工による新規バイオチップやバイオセンサーの創成、ナノレベルの空間分解能のスペクトロスコピーによる診断・治療、など物質科学を基盤とした医学や医療、即ちナノメディシンの概念が出現した。
ナノメディシンと言う言葉は、しかし、2003年4月のヒトゲノムの解読完了をもって、NIH が発表した人類の健康に関するロードマップの発表の中で用いられた言葉であることを認識することは重要である。ワトソン、クリックの二重螺旋の発見を契機として、生物物理学など生命を物質科学の観点から研究する学際領域が生まれ、多くの人々の努力により生命科学と物質科学の無明の谷間は日に日に科学の光に照らされることとなった。この変化のスピードはゲノムの解読により一層急速なものとなり、その影響はほぼ全科学技術の領域に及んでいる。
すなわち、ナノメディシンはゲノムの解読完了により、生命の構造、機能の全て、従って医療も分子を基盤として解決できると言う原理が示されたところに、偶然、その原理を実行する手段としてナノテクノロジーが同時期に出現した奇跡によって生まれた概念と言える。
このように歴史の流れを俯瞰すると、ナノテクノロジーとDNAの共通の基盤として分子の科学にたどり着く。遺伝子やタンパク質はもちろんの事、ナノ構造やナノ粒子の物性や機能の設計・解析は分子科学の一領域で、分子レベルの科学のナノメディシンへの寄与は明瞭であるが、さらに、神経変性疾患、循環器病、ガンなどの現在難病と呼ばれる色々な疾患を調べると、むしろ分子レベルの科学の積極的貢献が望まれていると考えるべきである。
このように、関連する学術分野が物質科学、生命科学、薬学、医学、これらの関連工学とさらには診断医療というように、ナノメディシンがこれまでに例のない、広範囲の学際性を有し、これまで学術的交流が全くなかった領域すら混じり合うという状況で、その学術の飛躍的発展と大いなる社会的貢献を達成するため、共通の討論の場を持ち、意見交換や共同研究の出会いの場を持つことは極めて重要な問題である。
物質科学が人の生命に関わる医学、医療の領域を取り扱うことについて、必然的に重要となる二つの問題がある。一つは,これまでにない全く新しい試みであることにより,この研究を本当に効率的に進める上で,基礎研究が極めて重要となることである。メカニズムをきちんと明らかにすることにより、複雑多岐な問題を系統的に扱うこと、あるいは予測的に研究を進めることが可能となる。特に安全性は極めて重要な問題で、原理に基づくことは強く望まれることである。また、もう一つの問題は、結果として得られる成果の配分の問題である。
ナノメディシンの研究によりこれまで解決できなかった難病の治療法が開発される可能性が大きいが,其の恩恵に預かれる人々が一部の裕福な人々にかぎられてしまうことは、ナノテクノロジーが人類の知的資産であることを考えると矛盾することである。このような不公平が地球規模で起こっていることを考えるとナノメディシン研究が国際的連携によってなされることは極めて重要なことと言える。世界のナノメディシンに携わる基礎から応用にいたる研究者、医療者が交流し学術と医療技術の発展および、アジア地域の若手研究者の育成に貢献することをめざす。